いくら書きつづけても、結局「自分は何もわからない」ということを書くだけである。
では、その自分とは何であろう。
これまで書いてきた心の働きの中で、全体をしめくくっている字をさがし出してみよう。
これはわけなくできる。
「思う」というのがそれである。
こころのこの働きを、ギリシア人にしたがって分類すれば「情」である。
人の主体は情らしい。
わたしはそう思ったから、この情を精密に見ようとして「情緒」をもとにして全体を見直そうとしているのである。
では、その自分とは何であろう。
これまで書いてきた心の働きの中で、全体をしめくくっている字をさがし出してみよう。
これはわけなくできる。
「思う」というのがそれである。
こころのこの働きを、ギリシア人にしたがって分類すれば「情」である。
人の主体は情らしい。
わたしはそう思ったから、この情を精密に見ようとして「情緒」をもとにして全体を見直そうとしているのである。
岡潔
大阪生まれ。日本数学史上最大の数学者。1925(大正14)年、京都帝大卒業と同時に講師に就任、以降、広島分理科大、北大、奈良女子大で教鞭をとる。多変数解析函数論において世界中の数学者が挫折した「三つの大問題」を一人で全て解決した。1960(昭和35)年、文化勲章受章。エッセイ集に『春宵十話』『日本のこころ』『風蘭』『情緒の教育』『情緒と創造』『情緒と日本人』などがある。