わたしはただ自分の才能の限界を、生きている間にできるだけ推し開いてみようと努力しているだけで、決してたいした芸術家ではありません。
ただひとつだけ芸術家であろうと守ってきたことがあります。
それは、家庭を捨ててから今までの間に、人生の別れ道に立ったとき、必ず危険なほうを選んできたということです。
そのためにいろいろ苦労もしました。
けれど、後悔したことはありませんでした。
ただひとつだけ芸術家であろうと守ってきたことがあります。
それは、家庭を捨ててから今までの間に、人生の別れ道に立ったとき、必ず危険なほうを選んできたということです。
そのためにいろいろ苦労もしました。
けれど、後悔したことはありませんでした。
瀬戸内寂聴
1922年〈大正11年〉5月15日生
日本の小説家、天台宗の尼僧。俗名晴美。京都府在住。僧位は権大僧正。1997年文化功労者、2006年文化勲章。学歴は徳島県立高等女学校(現:徳島県立城東高等学校)、東京女子大学国語専攻部卒業。学位は文学士(東京女子大学)。元天台寺住職、現名誉住職。比叡山延暦寺禅光坊住職。元敦賀短期大学学長。徳島市名誉市民。京都市名誉市民。代表作には『夏の終り』や『花に問え』『場所』など多数。1988年以降には『源氏物語』に関連する著作が多い。これまで新潮同人雑誌賞を皮切りに、女流文学賞、谷崎潤一郎賞、野間文芸賞などを受賞している。